プーチン氏、日本たばこ産業のロシア事業を自国企業管理下に置く――日本人記者拘束から数週間後

日ロ関係

ウラジーミル・プーチン大統領は、世界最大級のたばこメーカーである日本たばこ産業(JTI)のロシア事業を、ロシア企業の管理下に置く大統領令に署名した。この措置は、10月中旬にサハリンでスパイ容疑により拘束された北海道新聞記者の件に続くものとなる。

​​詳細:プーチン氏の大統領令に基づき、管理の対象となるのは「JTIドンスコイ・タバク」、「JTIエレツ」、「クレス・ネヴァ」、「ペトロ」の各法人である。これらは、ロストフ・ナ・ドヌ、エレツ、サンクトペテルブルクに位置するJTIのたばこ工場である。

これらの企業の経営権は、株式会社「インダストリアル・アセッツ」に移管された。企業データベース「SPARK」によると、ロシア国内には同名の企業が複数存在するが、大統領令では具体的にどの企業が管理権を得たのかは明記されていない。

JTIは日本政府が3分の1の株式を保有している企業であり、戦争勃発後もロシアでの事業を継続していた。

背景:10月13日、ロシア連邦保安庁(FSB)は、北海道新聞の記者がサハリンでスパイ容疑により拘束されたと発表した。日本政府および同紙は、この記者に対する容疑を否定している。

逮捕の直前、日本は、北朝鮮のハッカー集団が使用するソフトウェアに関与したとされるハッカー集団「キリン」に関連するロシア人を、ドイツに引き渡していた。英誌『エコノミスト』は、この人物をロシアが現在関心を寄せている重要人物であると報じている。

『デイリー新潮』によると、日本政府は記者の解放に向け、二つの選択肢を検討しているという。一つは米国がロシアとの捕虜交換に関与する形、もう一つはモスクワとキーウ(キエフ)の間で行われる捕虜交換に同記者を含める形である。(agents.media 2026/11/5)

※agents.mediaはロシアの独立系調査報道メディア

ロシア国内のJT関連工場 一時的にロシア企業管理下に 大統領令

(NHK 2026/11/5)

ロシアのプーチン大統領は5日、JT=日本たばこ産業の海外の子会社がロシア国内に保有する4つの生産拠点を、一時的にロシア企業の管理下に置く大統領令に署名しました。

プーチン大統領が署名した大統領令によりますと、一時的にロシア企業の管理下に置かれるのは、JT=日本たばこ産業の海外の子会社であるJTインターナショナルがロシア国内に保有する4つの生産拠点です。

JTインターナショナルのサイトに公開されている情報では、生産拠点はロシア第2の都市サンクトペテルブルク、北西部レニングラード州、モスクワ南方のリペツク州、それに南部のロストフ・ナ・ドヌーにあるとしています。

ロシア国営タス通信は、ウクライナ侵攻を続ける中、2023年4月の大統領令により、ロシアに制裁を科した「非友好国」の企業がロシア国内に保有する資産をロシア政府や指定された企業の一時的な管理下に置くことができるようになったと報じています。

日ロ関係をめぐっては、2026年8月、プーチン大統領が初めて北方領土の択捉島を訪問したのに続いて、10月にはロシアの治安機関FSB=連邦保安庁が極東のサハリン州で北海道新聞の男性記者をスパイ容疑で拘束するなど制裁を科す日本への揺さぶりを強めています。

JT「今後取り得る選択肢 精査」

JT=日本たばこ産業は、「当社は、JTインターナショナルのロシア事業の資産を一時的な管理下に置くとするロシア大統領令について認識しています。現在、従業員をはじめとするステイクホルダー=利害関係者を最優先に、状況および今後取り得る選択肢について精査しています」とコメントしています。

JTインターナショナルのロシア事業とは

JT=日本たばこ産業では、海外事業を手がけるJTインターナショナルが1999年からロシア国内で事業を始め、2018年にはロシアのたばこメーカーをおよそ1900億円で買収するなど、有数の市場であるロシアで事業拡大を進めてきました。

JTやJTインターナショナルの公表資料では、ロシア国内には4つの生産拠点があり、2025年のロシア国内でのシェアはおよそ37%で「たばこ市場のリーダーだ」としています。また、JTグループ全体の売上収益のおよそ1割をロシアで稼いでいます。

しかし、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、サプライチェーンに制約が生じることや、安定的な事業活動に支障が出る可能性があることなどを理由に、JTはロシア事業について、グループ経営からの分離を含め検討を続けていると明らかにしていました。

ロシアによる外国企業の一時管理はこれまでも

2023年以降、一時的な管理下に置かれる「非友好国」の企業が相次いでいます。

欧米メディアによりますと、2023年に、フランスの乳製品大手やデンマークのビール大手がロシアの政府機関の一時的な管理下に置かれ、ロシア企業に売却されたと報じています。

また、ことし9月には、スイスの食品大手やロシアでスーパーを展開するフランスの小売り大手がロシア企業の管理下に置かれたとしています。

AP通信は、こうした措置によって欧米企業の事業がロシア側に破格の安値で強制的に売却される結果につながってきたと伝えています。

日ロ関係 急速に悪化

日本とロシアの2国間関係は、2022年2月にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始したあと、急速に悪化しています。

日本がG7=主要7か国として足並みをそろえる形で経済制裁を強化したのに対し、ロシアは強く反発し、この年の3月には北方領土問題を含む平和条約交渉を中断する意向を示しました。

あわせて、平和条約交渉の前進に向けた共同経済活動に関する対話からの離脱や、北方領土の元島民らによる、いわゆる「ビザなし交流」などの交流事業を停止すると表明しました。

また、「非友好的な国と地域」のリストを公表し、この中に日本も含めました。

ことしに入ってからは、8月にプーチン大統領が初めて北方領土の択捉島を訪問し、日本が強く反発しました。

さらに、10月には、ロシアの治安機関FSB=連邦保安庁が極東のサハリン州で北海道新聞の男性記者をスパイ容疑で拘束しました。

10月31日には、茂木外務大臣とロシアのラブロフ外相が、両国の外相としてはおよそ5年ぶりに正式に会談しましたが、日本側が拘束されている記者の即時解放を要請したのに対し、ロシア側は制裁の解除を求めるなど、従来の主張を繰り返したものとみられます。

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